相続税実地調査、申告漏れ課税価格減少も1件当たり追徴税額はこの10年で最多に

 国税庁の令和2事務年度相続税調査事績によると、同事務年度の実地調査件数は、資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案5,106件(対前年比52%減)に対して実施され、このうち87.6%に当たる4,475件(同50.7%減)から申告漏れを把握し、その申告漏れ課税価格は1,785億円(同41.4%減)となっており、新型コロナウイルスの影響に伴う調査の自粛から各項目とも大幅に減っています。なお、申告漏れ課税件数のうち719件は故意に申告を除外していたなどの理由から重加算税が賦課されていて、その重加算税賦課対象額は319億円(同44.1%減)でした。

 一方、上記のように実地調査件数等は半減したものの、大口・悪質な不正が見込まれる事案を優先して調査を実施した結果、実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は3,496万円(同22%増)、追徴税額は943 万円(同47.3%増)と過去10年間で最高となりました。

 申告漏れ相続財産の金額の内訳では、最多が「現金・預貯金等」の529 億円(構成比30.1%)で、以下、「有価証券」282 億円(同16.1%)、「土地」188 億円(同10.7%)、「家屋」29 億円(同1.6%)の順で、生命保険金などの「その他」は728 億円(同41.4%)となっています。

 国税当局では近年、適正申告者に対する公平感を著しく損なうことから「無申告事案」と「海外資産関連事案」に力を入れています。

 無申告事案は、同事務年度では462件に実地調査が展開されて、409件から455億円の申告漏れ課税価格を把握。実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は9,848万円におよび、1件当たりの追徴税額1,328万円は平成21年からの事績集計以降最も多額でした。

 海外資産関連事案では、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS 情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し調査を展開。同事務年度は551 件に実地調査を行った結果、96 件に申告漏れ等の非違が認められ、申告漏れ課税価格は34億円、1件当たりの申告漏れ課税価格は3,579 万円となっています。