令和3年度査察事績〜コロナ禍で告発分の脱税額は3年連続過去最少

国税庁の令和3年度査察調査事績によると、今年3月までの1年間に着手した査察調査件数は116件(前年度111件)で、前年度からの継続事案を含めた脱税事案に対する刑事責任の追及を行うため検察庁への告発の可否を最終的に判断した処理件数は103件(同113件)となっていて、発生及び処理件数とも前年に引き続き新型コロナ感染症発生前と比べると調査の自粛等の影響から大幅に減少しています。

処理件数のうち検察庁に告発した事案は72.8%に当たる75件(同83件)となっていて、3年連続して告発率は70%を超えています。告発分の脱税額(加算税含む)は60億7,400万円で3年連続して過去最少となっており、1件当たりの脱税額は8,100万円でした。

告発した事案を税目別にみると、最も多いのが法人税事案の43件で脱税総額は35億1,900万円と全体の半数以上を占め、次いで消費税事案が21件で脱税総額16億5,500万円。消費税事案については、仕入税額控除や輸出免税制度を悪用し、架空の課税仕入れを計上や国内取引を輸出取引に仮装して不正に消費税の還付を受ける悪質な事案が横行していることから積極的に調査が行われていて、告発した21件のうち不正受還付事案(ほ脱犯との併合事案含む)は9件、未遂を含めた不正受還付額は4億3,400万円にのぼっています。

告発された査察事件の一審判決の状況(令和3年度中)をみると、117件に判決が言い渡され全てが有罪判決となり、特に悪質な脱税者5人には実刑判決が下されています。ちなみに、1件当たりの犯則税額は6,400万円、懲役月数は15.7月、罰金額は1,500万円で、実刑判決のうち査察事件単独のもので懲役2年、他の犯罪と併合されたもので懲役9年が言い渡されたものもありました。