コロナ禍で滞納残高が2年連続の増加

 国税庁の「令和3年度租税滞納状況」によると、同年度末の滞納整理中のものの額(滞納残額)が2年連続して増えていることがわかりました。
 同年度の新規滞納額は、新型コロナの影響を受けて納付が困難となった納税者に対する支援策「特例猶予制度」の適用により抑えられていた前年度分の納税額の一部が、猶予期限を過ぎて滞納となり上積みされたこと等により、前年度に比べ27.2%増えて7,527億円と2年連続で増加しています。
 新規発生滞納額を税目別にみると、例年同様に消費税が3,997億円で最も多く、申告所得税1,719億円、法人税995億円、源泉所得税393億円、相続税325億円の順で、いずれも前年より増加しており、新規発生滞納額を申告等により課税されたものの徴収決定済額で除した「滞納発生割合」は1.1%となっています。
 一方、同年度に処理した滞納整理済額は6,956億円で、前年度を34.2%も上回りました。これは、前年度は、納税が困難な者に対する特例猶予の適用を最優先に取り組んだことから滞納整理の実施が抑えられていましたが、納税者個々の実情を踏まえて、十分な資力があるにも関わらず滞納となった納税者へは滞納処分を実施するなど確実な徴収に努めたことが大きな要因です。具体的には、新規、少額の滞納者へ電話で滞納整理を行う「集中電話催告センター室(納税コールセンター)」による納付催告や、租税条約上の要件を満たす事案に対して各国の税務当局が協力して相手国の租税を徴収する「徴収共助」制度の活用のほか、通常の滞納整理の手法では処理進展が図られない事案については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟等の原告訴訟の提起といった訴訟的手法、滞納処分免脱罪による告発などによる処理の促進が図られています。
 今年3月末の滞納整理中のものの額(滞納残額)は、新規滞納額が整理済額を上回っていることから8,857億円となり2年連続の増加となりましたが、ピーク時(平成10年度)の2兆8,149億円と比べると、約3割となっています。