国税庁が不正還付事案の多い税務署への「消費税専門官」増設などを要求

 国税庁がさきごろ公表した令和5年度の機構・定員及び予算概算要求では、税務行政のデジタル化の促進やインボイス制度の円滑な導入等に向けて必要な経費計上等の要求を行っています。 まず、機構の要求では、税務行政のデジタル化の対応として、以前にも要求していた東京国税局への「情報システム部(仮称)」の創設を求めています。業務内容としては、申告手続等のオンライン化を推進する中で、独立した部署としてシステム開発及び管理・運用を行います。

 また、1)近年重点施策としている消費税不正還付への対応として、管内で不正還付事案の多い主要税務署に「消費税専門官」の増設、2)経済取引のグローバル化・デジタル化等による調査・徴収事務の複雑化への対応として、国税庁の課税総括課と同課消費税室に課長補佐を増員、3)個人・企業による国際事案への対応として、東京国税局に査察機動専門官、大阪国税局に情報技術専門官、両国税局に国際税務専門官の増設、4)日本産酒類の輸出を促進するため仙台・名古屋・広島・熊本の4国税局へ「酒類業振興専門官」の増設、などを求めています。  定員要求については、消費税不正還付や国際的な租税回避等への対応や、来年10月から開始されるインボイス制度への円滑な導入への対応など1,192人の増員を要求しており、令和5年度の定員合理化目標数を差し引いた純増要求数は51人となります。

 一方、予算の要求を見ると、今年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」及び「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」等の政府全体の方針に加えて、納税者利便の向上、課税・徴収の効率化・高度化、酒類業の振興等に必要な予算要求を行っています。

 このうち、e-Taxの機能拡充や税務行政DX等に係る経費などデジタル庁が一括要求する政府情報システム関連予算を除く予算要求額は、4年度当初予算より301億円増の6,555億円となっており、主なものとしては、最も多いのが移転予定の仙台国税局の鶴岡署、東京国税局の中野署及び横浜中署の移転関係経費を含む「庁局署一般経費」で614億円。確定申告など紙ベースで申告書を提出した納税者に対するe-Taxの利用勧奨ハガキやリーフレットの送付などのe-Taxの利用促進に向けた取組等への経費や、e-Taxの利用者増に対応するためオペレータを増員する電話相談センターの運営経費などが含まれる「納税者利便向上経費」として29億円を計上している。