相互協議の発生件数が301件と過去最高に

 国税庁の令和4事務年度の「相互協議の状況」によると、相互協議の発生件数が過去最高となったことがわかりました。

 相互協議とは、納税者が移転価格課税等による国際的な二重課税を受けた場合、または受けるに至ると認められる場合に、国税庁と条約締結国の税務当局間で解決を図るための協議手続きです。

 令和4年7月から5年6月までの1年間に発生した相互協議事案は301件(前事務年度比22.3%増)となり、過去最多を記録しています。301件の内容を見ると、全体の8割以上を占めているのが、納税者が税務当局に事前に申し出た独立企業間価格の算定方法等を税務当局が確認した場合には移転価格課税は行わないという制度の「事前確認」に係るもので、件数は243件と前年度から29.2%増えました。事前確認を除く58件が「移転価格課税その他」に係るもので、この中には、1)移転価格課税、2)恒久的施設(PE)に関する事案、3)源泉所得税に関する事案などが含まれています。

 同事務年度の処理件数は191件(前事務年度比3%増)で、「事前確認」に係るものの146件、「移転価格課税その他」に係るものの処理件数は45件でした。処理事案1件当たりに要した平均的な期間は30.2ヵ月で若干短くなっています。

 業種別の処理件数は、「製造業」124件、「卸売・小売業」44件、「その他」23件、また対象取引別では、「棚卸取引」、「役務提供取引」、「無形資産取引」の順となっています。

 令和4事務年度で処理できず翌事務年度へ繰り越した件数は、処理件数を発生件数が上回っていることから、742件と前事務年度に比べて110件増加しました。