相互協議事案の発生件数過去最多

 国税庁がこのほど公表した令和3事務年度の相互協議の状況によると、新型コロナ等により2年連続で減少していた相互協議事案の発生件数が、再び上昇に転じるとともに大幅に増加し過去最多になったことがわかりました。

 相互協議は、企業など納税者が租税条約規定に適合しない課税を受けた場合等に、その課税を排除するため条約締結国の税務当局間で解決を図る協議手続。今年6月末時点で相互協議の申立てが行われている相手国は計30か国・地域におよびます。

 昨年7月から今年6月までの1年間における納税者からの相互協議の申立て又は相手国税務当局からの相互協議の申入件数(発生件数)は、246件と前事務年度より61件も大幅に増加し、これまで最多だった平成30事務年度(219件)を上回り過去最多を更新しています。

 事案の種別では、「事前確認に係るもの」が188件、「移転価格課税その他」が58件で、事前確認に係るものが全体の約8割を占めています。なお、「移転価格課税その他」のその他には、恒久的施設(PE)、源泉所得税に関する事案などが含まれます。

 一方、相互協議事案の発生を受け、相手国税務当局の合意や納税者による相互協議の申立ての取下げ等により相互協議を終了した件数は186件でした。

 処理事案186件の事案の種別は、「事前確認に係るもの」130件、「移転価格課税その他」56件で、業種別では「製造業」が125件で全体の約7割を占め、「卸売・小売業」38件、「その他」23件。また、対象取引別(複数取引有り)は、「棚卸資産取引」が139件、「役務提供取引」が96件、「無形資産取引」が70件となっており、独立企業間価格の算定方法別では、企業にとって使い勝手が良いとされる「取引単位営業利益法(TNMM)」が121件と半数以上を占め、「独立価格比準法」は12件、「利益分割法」は11件など。

 この結果、繰越件数は632件(事前確認に係る事案は489件)と前年より60件増加して5年連続で過去最多を更新しています。