国税庁がまとめた令和4年度査察調査事績によると、今年3月までの1年間の査察調査の着手件数は145件(前年度116件)、処理件数は139件(同103件)で、その脱税総額(加算税含む)は127億6,000万円(同102億1,200万円)と全てで前年度を上回り、このうち悪質・高額などから検察庁へ告発した件数は74.1%に当たる103件(同75件)におよび、その脱税総額は100億1,900万円(同60億7,400万円)で4年振りに100億円を超えました。
告発した事案を税目別でみると、法人税事案が半数近くを占める47件(脱税額42億7,500万円)、消費税事案が34件(同30億1,000万円)などに加えて、令和に入り告発がなかった相続税事案も2件(同2億8,800万円)含まれています。また、業種(同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は1者としてカウント)別では、「建設業」22者、不動産業」13者、「小売業」12者がワースト3でした。
近年、仕入税額控除や輸出免税制度等を悪用し、架空の課税仕入れを計上するなどの消費税不正還付事案が横行していることから国税当局では目を光らせており、4年度も「不正受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)」を16件告発し、未遂を含めた不正受還付額(加算税除く)は昨年度の3倍強となる13億4,700万円に達しています。不正事例をみると、日用品の輸出販売のほか、輸出物品販売場の経営等を行うA社は、取引事実がないにもかかわらず、不正加担者と共謀して、同人が主宰する法人から化粧品等を仕入れたかのように装い架空の課税仕入れを計上し、その化粧品等を輸出物品販売場において外国人観光客に販売したかのように装い架空の免税売上げを計上する方法で、不正に消費税等の還付を受け、又は受けようとしていました。
その他、時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対しても積極的に取り組んでいて、取引事実のない虚偽の領収書等を作成し、架空の仕入高を計上する方法により所得を秘匿し法人税を免れていたトレーディングカード販売業者なども告発しています。
脱税による不正資金の多くは、現金・預貯金として留保されていますが、不動産の購入や有価証券等への投資のほか、高級車両や高級腕時計の購入や、競馬等のギャンブルや高級クラブの遊興費として支出された事例もありました。
なお、告発された査察事件の一審判決をみると、4年度中に61件判決が言い渡され全てが有罪判決で、特に悪質な脱税者3人に実刑判決が出されています。 |