居住用マンションの評価額の算定ルール見直しで新通達案をパブコメ

 国税庁は、7月21日付けでマンションの評価方法を定めた個別通達「「居住用の区分所有財産の評価について」の法令解釈通達(案)」をパブリックコメントに付し、8月20日まで意見募集を行っています。

 相続税等における財産の価額は相続税法の規定により、財産の取得の時における時価とされていて、国税庁が財産評価基本通達に各種財産の具体的な評価方法を定めていますが、近年、居住用マンションの相続税評価額について、「時価(市場売買価格)」との大きな乖離が生じているケースが見受けられます。また、令和5年度与党税制改正大綱で、上記のようなケースを放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する観点からも、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ適正化を検討することが明記されたことを受けて見直されます。

 今回の見直しでは、土地等の評価方法を規定している財産評価基本通達を改正するのではないかとも見られていましたが、「居住用の区分所有財産の評価について」という新たな名称の個別通達が設けられます。

 内容は、相続税評価額と市場価格の乖離を是正するための方法を検討することを目的に立ち上げられた「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」が示した見直しに沿った内容となっています。

 まず、マンション一室の区分所有権等に係る敷地利用権の価額は、「自用地としての価額」に、一定の補正率を乗じて計算した価額を、その「自用地としての価額」とみなして評価します。具体的には、「築年数」、「総階数指数」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4指数に基づいて評価乖離率を求め、1を乖離率で除した評価水準が0.6未満の場合は「従来の評価額に評価乖離率と0.6を掛けて補正」し、評価水準が1を超える場合は「従来の評価額に評価乖離率のみを掛けて補正」します。なお、区分所有者が一棟の区分所有建物に存する全ての専有部分、一棟の区分所有建物の敷地のいずれも単独で所有している場合は、「補正率」は1を下限とします。

 次に、一室の区分所有権等に係る区分所有権の価額については、「自用家屋としての価額」に、上記と同様の補正率を乗じて計算した価額をその「自用家屋としての価額」とみなして評価します。

 なお国税庁では、これらの居住用の区分所有財産の評価について、納税者が簡易に計算するためのツールを用意することとしています。