国税庁の令和4事務年度相続税の調査状況によると、同事務年度中に各種法定調書や申告書及びインターネット情報等の部内外資料、租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換により、申告額が過少であると想定される事案や申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定された8,196件(対前年比29.7%増)に対して実地調査を行った結果、85.8%に当たる7,036件(同27.2%増)から2,630億円(同17.9%増)の申告漏れを把握し、加算税を含め669億円(同19.5%増)を追徴しています。
また、申告漏れ件数のうち14.8%の1,043件(同21.6%増)が故意に相続財産を申告から除外しているなどの不正を働いていたことから重加算税が賦課されていて、重加算税賦課対象申告漏れ課税価格は388億円(同14.2%増)でした。
この「実地調査」に文書や電話による連絡又は来署依頼による面接により申告漏れや計算誤り等がある申告を是正する「簡易な接触」を合わせた調査等件数は2万3,200件、申告漏れ等の非違件数1万721件、申告漏れ課税価格3,316億円、追徴税額756億円で過去5年間では最も高い数字となっています。そして、申告漏れ相続財産の金額の内訳をみると、「現金・預貯金等」の815億円が全体の31.5%を占めて最も多く、以下、「土地」336億円(構成比13.0%)、「有価証券」309億円(同11.9%)、「家屋」67億円(同2.6%)と続きます。
国税当局では、近年調査対象として目を光らせているのが「海外資産関連事案」で、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)等を活用して情報収集を行っています。4事務年度では、845件へ実地調査を展開した結果、事績の公表を開始した平成13事務年度以降最多となる174件から何らかの非違を把握しています。その申告漏れ課税価格は重加算税賦課対象となった4億円を含めて70億円に達しており、1件当たりの申告漏れ課税価格は4,028万円におよびます。
なお、申告漏れ事案としては、渡航先で被相続人名義の海外口座から自分の海外口座に預金を移し税理士等には故意に伝えず申告しなかった大口事案などが把握されています |